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大西園製茶工場


1kg 112万円の緑茶を作る男

1kg 112万円の緑茶を作る男埼玉県入間市は狭山茶の産地として最も有名であり、狭山茶の出荷量も第1位を誇る地域になります。

その入間市に、全国手もみ茶品評会という、手揉み茶の技術を競う最も由緒ある大会で1等に輝いた手揉み師がいます。それが大西園製茶工場の中島毅さんです。

彼の生み出す手揉み茶は、なんと1kg当たり112万円の値が付くほど。それでも中島さんのお茶を飲むがために、1杯5,000円の手揉みの列に行列ができ、即日完売ということもありました。

中島さんは現在33歳であり、緑茶業界では知る人も多い若手のホープとして注目を集めています。日本で最高峰の技術者として活動を続ける中島さんですが、彼がお茶業界へと足を踏み入れたことには、一つのきっかけがありました。

すべては手揉み茶との出会い

手揉み茶との出会いが道を決めた中島さんたちの経営する大西園は、なんと創業250年、江戸時代から続く伝統的な狭山茶のお店です。

その大西園の長男坊として、ゆくゆくは大西園を背負っていくことを期待されていた中島さんですが、実は高校時代まで教職に憧れていたそうです。しかし、高校を卒業して間もなく、静岡にある国立茶業研究所(現在は独立行政法人農業生物系特定産業技術研究機構、野菜・茶業研究所)へと半ば強制的に連れて行かれ、そこで緑茶製造のノウハウを学ぶことに。

まだ気持ちのわだかまりもあった中島さんですが、2年間の寮生活を通し、そこで出会った多くの仲間たちとの交流に刺激され、次第に緑茶への魅力を覚えるように。

そして決定的だったのが、手揉み茶との出会いでした。

「私がコレだ、と思ったのは手揉み茶でしたね。こんなお茶があるのか、まさに衝撃的でした。手揉みは緑茶の芸術です。これを作ってみたいという思いが、緑茶への道を決定づけてくれました」

それ以来、道を一本に決めた中島さんは、家業を手伝いながら日々手揉み茶やその他緑茶の研究をつづけ、やがて、ついに日本一の座へとたどり着くことになったのです。

誰も作れないから意味がある

誰にも作れないから意味がある中島さんに大西園のこだわりを聞いてみると、こんな回答が返ってきました。

「他のお店と同じものを作っても面白くない。私は、常に誰にも真似できないお茶を作りたいと思っています。あるいは、そうでなければ作る意味がないとも考えています」

中島さんは毎年必ず、前年とは違う手法を少しずつ試しているそうです。

茶葉の品種であったり、新しい製造過程を取り入れるなど、常に「美味しいお茶」を追求し、実践し続けているその中島さんの姿勢や価値観こそが、まさに大西園の最大のこだわりであり、他の店との決定的な違いといえるでしょう。

挑戦に成功し、人々にも試して貰いたいと思った商品は、通常の品並びとは別に、限定商品として販売しているそうです。

「このような商品では好き嫌いがはっきりしてしまいますが、それもまた緑茶の楽しみのひとつです」

中島さんの緑茶に対する情熱は、このような形でも表れているのです。

日本の文化を残していきたい

日本の文化を残していきたい緑茶を飲む人が減っているという現状に、中島さんも少し寂しさを覚えるそうです。

緑茶がお茶の間から消えつつある、急須を持たない人がたくさんいる、そういう現状を肌で感じています。緑茶に限らず様々な業界において、昔からの習慣や文化が薄れている、それはある意味で仕方のないことですが、一方で、とても残念です。

「私にとって、一年を共に過ごす緑茶は、まさに家族のようなものであり、その緑茶を通じて、多くの人々と繋がって来られました。とても大切なものですし、多くの人々にとってもそうであった欲しいと思っています。

緑茶は健康にとても良いですし、それに、忙しい生活の中で、一杯の緑茶を飲むことが、もしかすると皆様に一瞬のゆとりを持たせてくれるかもしれません。それだけでも、緑茶の価値は十分にあると思います。

日本の文化を残していくためにも、私のできることをやっていきたい。まずは、皆様と同じ目線に立って、皆様が楽しめる緑茶を作ること、それが常に、私にとっての第一歩です」

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